落とし物をエンターテインメントに変える方法 〜アリエルのスマートフォン〜
今日、僕が街を歩いていると、忘れ物らしきものが置かれていた。
カルピスサイダーと、アリエルのスマートフォン。
あまりにも堂々としていたので、最初は「持ち主は近くにいて、ただ置いているだけ」かとも思った。
だけど本当に忘れ物かもしれないので、ちょっと見守ってみることにした。
だけどなかなか持ち主が現れない。どうやら忘れ物確定だ。
アリエルのスマートフォン。
しばらく待っていると向こうから電話がかかってきて、僕が対応する。
そこに美女が現れる。
なんて風景を想像しながら。
だが、一向に電話がかかってくる気配はない。
端末はもちろんロックされているし、誰かから連絡があった痕跡もない。
虫に噛まれたりして、かゆいので、仕方なくこの敷地の受付に届けることにした。
ちなみに最初からそうしなかったのは、いちど落とし物として届けてしまうと、
逆に連絡がとれなくなったり、手続きが面倒になるかも、と思ったからだ。
あとは、本当に落とし主から連絡があって「僕が守っておきましたよ!」ってなったら、ちょっと面白いかもと思ったから。
しかし、このままでは落とし主が戻ってきた時に、
敷地の受付に問い合わせよう、と思いつくとは限らない。
何らかのメモを残しておいたほうが良いんじゃないか? と思った。
だが手元にはメモもペンもない。
それだけのために、メモとペンをコンビニで買うのも、資源がもったいない。
「そうだ、近くのLOFTなら、文房具コーナーにペンとメモが置いてあるし、それでメモを作ろう」と思いついた。
僕は自分のアイディアに驚嘆しながらLOFTに入った。
そして文房具コーナー。
「こんなことは滅多にない機会だ」
「よし、この体験をブログにアップしよう」
と思いながら写真を撮る。
(と同時に「これって偽善者っぽくない?」「ブログにアップしたら叩かれない?」という小さな声も聞こえてくるので、軽く無視する。大丈夫、僕のブログは誰も読んでない)
そしてメモを書く。
こんな紙もあったので、ダジャレを書いてみる。
あまりに寒いので、ボツにした。
しかしこのメモはポスト・イットではないので、
たやすく風に吹き飛ばされてしまうかもしれない。
そうなると、このメモを固定するための仕組みも必要になる。
だがしかしここはLOFTだ。なにかあるはず。
探してみた。
この機会に、粘土みたいなものを買って、残りで自宅で遊ぼうかとか。
柄付きのテープを買って、職場で使おうかとか。
色々と考えた末。
遂に見つけた。これだ。
ハート型のカード立て。
となると次に必要なのは、ただの紙ではなく、カードだ。
幸運にも、カードコーナーには、アリエルのカードが売られていた。
必要なものは、全て揃った。
お会計。
ふたつ合わせて500円ぐらいだった。
そして元の場所に、こうだ。
たった1時間ぐらい。
かけたお金は500円ぐらい。
だけどこれをやり終えた時、
なんとも言いようがないような高まりを感じた。幸福感とさえ言っても良かったかもしれない。
「普段なら思いついても、やらないようなこと」を実際にやってみたという、爽快感。
(ドヤ感と言っても良いかもしれない)
あとは、人のために行動したという、自己満足感だ。
(遊びながらではあったけれど)
ちなみに人間というのは「人の役に立った」と自分が感じた時に、
最も幸福感が高まるという研究もあるらしい。
別にそれは自己満足でも、思い込みでも良いのだ、たぶん。
ってことが、今回の個人的実験でも実証された気がする。
ということで、お金を払ってどんなカフェに行くよりも、
ゲームセンターやカラオケに行くよりも、
平凡な日常や、落とし物をエンターテインメントに変えてしまう方が、ずっと幸福感を得やすいのかもしれない。
さあみんな、今日から、街に良い落とし物がないか探してみよう。
良かったところ
- ブログに書けるネタが出来た
- 人に話すネタが出来た (話すかどうかは分からないけど)
- 500円と1時間で幸福感が高まった (なおかつ500円分、経済に貢献した)
- 「落とし主が現れるかも」とドキドキできた
- ロフト楽しかった
- 落とし主本人にメッセージが届かないとも限らない
補足
その後。
とある足長おじさんから「警察に届けたほうが良かった」という意見をもらったのだけど、
落とし物を見つけたら、警察に届けるのがベストなんだろうか。
たとえば居酒屋の落とし物は、まずは居酒屋で管理される。
スターバックスで落とし物を見つけたら、スターバックスの店員さんに届ける。
同じく、テレビ局の敷地内で見つけた落とし物は、その管轄であるところのテレビ局に届けるのが最適な行為かなと思ったのだけど。
これは「落とし物の常識」を僕が誤解しているだけなのかもしれない。
警察に届けたら、落とし主にとって、手続きが面倒になるだけかもしれない。
すぐにテレビ局に届けても、ちゃんと管理してくれるかは分からない。(向こうから電話がかかってきた時に、対応されるのかどうか、とか)
最適なのは自分が見守っている間、スマホの電池が残っている間に連絡があって、手渡しすることだ。
しかしいくら「最適解」を考えたからといって、それが本当に最適であるかどうかは分からない。
僕らに出来るのは、自分の知識や考えの中で、最適を尽くすだけなのだから。
ということで僕は
「しばらく見守る」
「テレビ局の受付に届ける」
「書き置きを残す」
という手順を取ることにした。
しかも、すぐ近くのテレビ局受付にスマホを運ぶだけでも、
「泥棒してませんよ!」
「ちゃんと落とし物を届けに、受付方面に向かってますよ!」
感を出すのに必死だったのに、
そこから20分も離れた警察署に人のスマホを持ち運ぶ行為は、よほど勇気が必要だったであろう。
それに夏だし。暑いし。
落とし物を見つけた時の最適行為とは何なのか。
良識や善意の定義とは何か。
スターバックスの店員さんのホスピタリティは何故ここまで優れているのか。
スプラトゥーンは何故強豪勢がひしめいているのか。
そして人間は何故生まれてきたのか。
そんなことに頭を悩ませた夜だった。